三原山登山、活火山を実感 – 伊豆大島旅行(2)

距離12kmの火山トレッキングへ

今回の伊豆大島旅行の主目的は三原山登山。

伊豆大島は島全体が活火山で、中央は幅2,500m、長さ3,200mの広大なカルデラになっている。その南西部にある中央火口丘・三原山(標高758メートル)を目指す。山頂付近は直径300メートル、深さ200メートル以上の切り立った火口が口を開けている。

三原山(伊豆大島)
元町港から見た三原山

この日の予定ルートは、カルデラ西部の山頂口から外輪山に沿って南下し、まず景勝地「赤だれ」を目指す。赤だれを見た後、いったん北上。山頂口から続く一番メジャーな舗装された遊歩道に出て火口の展望台へ。その後、火口を巡る内輪山を反時計回りに一周。最後に裏砂漠ルートを北上して三原山温泉・大島温泉ホテルまで歩く。距離約12kmの比較的長いコースだ。

伊豆大島トレッキング地図
この日に歩いたコース

朝8時半、元町港のバス停から三原山頂口行きのバスに乗り、息子と二人登山に向かった。三原山頂口に行く路線「三原山ライン」は土日祝と観光ピーク時のみ運航している。元町港から山頂口までの運賃は大人900円。乗客は全員座席に座れるほどの人数だった。25分間の乗車、8時55分に終点の山頂口に着いた。

三原山山頂バス停(伊豆大島)
三原山頂口のバス停

山頂口のバス停周辺にはトイレ、土産物屋、食堂があり、日本全国で見かける観光地の雰囲気。トイレで用を足して9時10分に登山を開始した。

壮観! 真っ赤な谷「赤だれ」

多くの旅行者は火口展望台へと続く遊歩道に向かったが、私たちはカルデラの外輪山に沿って南に進んだ。しばらくは若葉がみずみずしい林の中を歩く。

カルデラの林
登山開始後、しばらくは灌木の林の中を進む

秩父や奥武蔵の山々では見かけない植物が道の周囲を覆っている。赤い花が鮮やかな伊豆大島を代表するオオシマツツジのほか、白い葉が下向きに垂れたようなシロダモや、鎌首をもたげたマムシグサが目についた。

オオシマツツジとマムシグサ(伊豆大島)
左/オオシマツツジ 右/マムシグサ
シロダモ(伊豆大島)
白い葉が垂れたシロダモ

林を抜けると火山灰の徐々に道幅が広くなり、道の真ん中には大きな火山礫が落ちていた。1986年の噴火の際に飛び散ったものだろうか。こんな大きなサイズの礫が空から落ちてきたら、よほど頑丈な建造物でないかぎり、ひとたまりもない。

火山礫(伊豆大島)
大きな礫があちこちに

道幅はますます広くなり、やがて広大な灰色の大地へ。左手に三原山の全容が姿を現した。「表砂漠」と呼ばれる場所だ。

かつて表砂漠の面積はもっと広かったらしい。1950〜51年の噴火による溶岩流で、北半分が埋め尽くされてしまった。それでも十分に大きなスケール。

表砂漠(伊豆大島)
表砂漠の向こうに三原山が

黒い火山灰の大地を進むと「滑走台跡」と呼ばれる場所に着いた。登山計画を立てた時は「山の中に変わった地名があるな」と不思議に思っていた。第二次大戦前の1935〜1942年、ここから北側、外輪山の山腹に約600mのレールを敷設し、遊園地の一人用のスライダーのような乗り物で下るアトラクションが設置されていたらしい。

コンクリートの土台と床が無残な姿。遠目に見ると狼煙台の古代遺跡のようだ。三原山は1950〜51年、1986年と大規模な噴火があった。この付近にアトラクションを作るのは、事業的にリスクが大きすぎるだろう。

滑走台跡(伊豆大島)
滑走台跡

滑走台跡から外輪山に沿ってさらに10分ちょっと南東に進むと「赤だれ」に到着。赤銅色の谷。中学校の音楽の授業で歌った『赤い河の谷間』を思い出す。

侵食により火山灰や溶岩がむき出しになっており、赤く見えるのは熱で酸化したことによるもの。今回の登山で最も壮観で、立ち去るのが名残惜しかった。

赤だれ(伊豆大島・三原山)
赤い谷間「赤だれ」

ここで来た道を表砂漠まで引き返す。先は長い。

奇跡的に噴火の難を逃れた三原神社

赤だれから一度、表砂漠まで戻り、三原山登山のメインルートに通じる分岐を北東へ突っ切る。やがて、1986年噴火で流れ出た黒い溶岩が現れ、その中をひたすら歩くことに。

溶岩流の跡(伊豆大島)
ゴツゴツとした黒い溶岩流の跡を行く

やがて舗装路の遊歩道と合流。ここには1986年の溶岩流の先端がある。ゴジラのしっぽの先のようだ。ここには噴火した際に避難するためのシェルターがあった。

避難用のシェルター(伊豆大島)
避難用のシェルター

このあたりから三原山の山頂に向けて傾斜がきつくなる。5月初旬だが初夏の暑さ。秩父や奥武蔵の山と違って、三原山は日光をさえぎる高い樹木がない。さらに噴火口までは舗装路。スポーツドリンクをこまめに補給した。

山頂遊歩道(伊豆大島)
表砂漠に比べて山頂遊歩道はハイカーの姿多数

山頂遊歩道の合流点から30分ほどの上りで、三原神社に到着。鳥居からスロープを下るように社殿に向かう。目の前は広大なカルデラが。はるか奥には山頂口の休憩舎が米粒のように見えた。

三原神社の鳥居
三原神社の鳥居。スロープの先に表砂漠が見える

スロープを下りて右に進むと三原神社の社があった。1986年の噴火の際、溶岩が社まで数十センチのところで停止したという。黒い溶岩に囲まれるように建つ。登山の無事を祈願。

三原神社の社殿
三原神社の社殿。背後に溶岩が迫っている

三原山の噴火口を反時計回りに一周

三原神社を後にして、いよいよ噴火口に向かう。なだらかな坂道を10分くらい歩くと火口西展望所へ到着。2021年に登った八丈島・八丈富士のお鉢よりもはるかに大きい。

ただ、火口の絶壁までは距離があり、眺望という点ではこの後訪れる南側の火口展望所からの眺望の方がダイナミックだった。

三原山・火口西展望所
火口西展望所からの眺め

西展望台を後にし、火口を一周する道との分岐点には3階建ての展望台があり、ここからのカルデラの眺めも素晴らしかった。この建物の一階にはトイレがある。

三原山・展望台
展望台。山頂付近では唯一のトイレあり

再び火口の内輪山(お鉢)を反時計回りに進む。ここからは未舗装路となる。火山灰の礫をジャリジャリと踏みしめながら進む。粗い砂が崩れるような感覚で歩きにくくなった。標高758mの山頂に向けて勾配が急になる。

三原山の山頂へ
三原山山頂に向けて急勾配に

最高地点には足を踏み入れることができなかった。山頂を巻き込むようにして南側の火口展望台に着いた。直径約300~350m、深さ約200mの巨大な縦穴の底の方まで見渡せる。

ここから見た火口は本当に壮観。1974年の小噴火以前は、底にあるマグマが見えることがあったらしい。

三原山中央火口
火口展望台から見た噴火口

内輪山の外側に目を移すと、広大な黒い砂漠が広がっている。「裏砂漠」。三原山の噴火で降り注いだマグマのしぶきが冷えた礫=スコリアでできている。なお、裏砂漠は国土地理院発行の地図で唯一「砂漠」と表記された場所だ。

裏砂漠を歩くトレッキングルートもあり、今度伊豆大島に訪れた時はぜひチャレンジしたい。

裏砂漠(伊豆大島)
内輪山より裏砂漠を見下ろす

お鉢めぐりを反時計回りに「45分間分」進むと、内輪山の尾根筋を歩いていることが実感できた。左手に噴火口、右手にカルデラ、内輪山はその境界となっている。

なお、この周辺は日光を遮るものがまったくない。夏は日射病対策が必須。また強風の日はかなり身体があおられると思われる。

お鉢めぐり(伊豆大島)
左奥の小山は1986年の噴火の際の火口列の場所

やがて噴火口への斜面中ほどから、白い水蒸気が吹き出している場所に近づいた。白い煙は山肌を絶え間なく昇っている。三原山が活火山であることを実感した。

水蒸気が上がる(伊豆大島)
山肌を水蒸気が上がる

再生の一本道を通って大島温泉ホテルへ

正午過ぎ、お鉢めぐりと三原山温泉・大島温泉ホテルへの分岐点に到着。小さなベンチがあったので、ここで昼食を取ることにした。昼食は昨夜、竹芝埠頭近くのコンビニで買ったおにぎりと惣菜。

私たち以外にもここでお弁当を広げているハイカーが数人いた。

お鉢めぐりから大島温泉ホテルへの分岐点(伊豆大島)
お鉢めぐりから大島温泉ホテルへの分岐点。小さなベンチあり

ここからはひたすら下り。黒いスコリアをざくざく踏みしめながら歩く。

内輪山を下りきったところがジオ・ロックガーデン。黒い溶岩の跡が無数のオブジェのように並んでいた。

温泉ホテルルート
ジオ・ロックガーデン。三原山を振り返る

ジオ・ロックガーデンから大島温泉ホテルへの道は「再生の一本道」と名付けられている。大島温泉ホテルに近づくにつれ、草木が密になり、やがて広葉樹が茂る森林の中に入る。

噴火による消失から、時間の経過とともに森が再生していく過程を歩きながら感じることができる。「いつか森になる道」「こもれびトンネル」というネーミングも素敵だった。

再生の一本道(伊豆大島)
森林が蘇った「再生の一本道」

ゴール地点の三原山温泉・大島温泉ホテルには13時15分に到着。3時間50分の登山だった。

かなり汗をかいたので温泉に入った。ここの露天風呂は三原山と裏砂漠を眺望できる絶好のロケーションにある。温泉だけの利用が可能で大人800円(子ども400円)。神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり等への効能あり。

大島温泉ホテル
大島温泉ホテル

大島温泉ホテルに1時間近く滞在した後、13時47分発の元町港行きの大島バスに乗って山を下りた。

大島温泉ホテル公式サイト


ヤマレコの登山記録

2022年春 伊豆大島旅行の記録
【1】早朝の元町港、源為朝の館跡と弘法浜を散歩
【2】三原山登山、活火山を実感
【3】泉津の切り通しと波治加麻神社を散歩
【4】大島公園海岸遊歩道を踏破
【5】サンセットパームラインをレンタサイクルで往復
【6】「地層大切断面」で地質への関心がムラムラ


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