岩手旅行- 遠野の最果て、早池峰神社を訪れる

2023年4月15日

早池峰山
花巻の宮沢賢治記念館から見た早池峰山

今回の岩手旅行では北上山地の最高峰・早池峰山に登るつもりで、登山準備をしていた。2013年の青森旅行では八甲田山、2014年の庄内旅行では月山に登ったので、早池峰登山を楽しみにしていた。

早池峰山地図

しかし、連日、あいにくの雨天であること、クマの被害に遭遇する可能性が高いことを鑑み、登山を諦めた。雨の中苦労して登っても視界数メートルだと何も楽しめないのは、昨年の月山登山で体験済み。加えて遠野に入って、旅館のおかみさん、観光センターのスタッフ共に、くれぐれもクマに注意するようにとアドバイスをもらった。雨具は準備はしていたが、クマよけの準備はしていなかったのだ。

せめてもと、早池峰山の南側にある早池峰神社まで、クルマで向かうことにした。早池峰神社は、早池峰山の東西南北に4か所にある。今回の登山は大迫の早池峰神社からスタートして、遠野の早池峰神社を終点にするつもりだった。遠野の早池峰神社が一番古い歴史を持っているのだが、なんせ地図を見ての通り、とても不便な場所にある。江戸時代、盛岡を拠点とした南部藩は、地理的に近い大迫の早池峰神社を保護したらしい。

下は、境内にあった遠野早池峰神社の縁起。

霊峰早池峰の山霊を祀り併せて早池峰山と共に遠野三山とよばれる石神、六角牛の山霊を祀る。草創は大同元年(西紀八〇七)三月八日猟師藤蔵(後に始閣と定む)が早池峰山頂に於て権現堂跡の霊容を拝して発心、山道を拓いてその年の六月十八日山頂に七尺有余の宮を創建し て祀ったのがこの社の始まりである。山頂の社は本宮と称し、承和十四年(西紀八四七)六月十八日藤蔵薙髪して普賢坊の長子長円坊が本宮の傍に新たに建立した若宮と共に現在この早池峯神社の奥宮として祀る。

嘉祥年間天台の高僧慈覚大師奥州巡歴の途次この地に至り宮寺妙泉寺を創建して坊を大黒坊と称し不動三尊・大黒一尊各々本尊を別に新山宮と号し三間四面の宮を建立し早池峯大権現を祀り、脇士として薬師・虚空蔵菩薩を併祀。坊には高弟持福院を住職とし神宮には長円坊を別当として神徒として仕うべきを命じた。祭祀は神仏混淆で盛大に行われて信仰は県外に及び阿曽沼親綱の時代に百二十石その後南部直栄より六十五石計二百石封祿寄進され明治維新に至り排仏棄釈により妙泉寺は廃され新山宮改め早池峯神社として現在に至った。その間寛治年中妙泉寺の宗派が天台宗から真言宗にかわり文治五年火災にて全焼する等の変革を経て現在の社殿は享保三年の建築で東西四十三尺一寸、南北三十三尺七寸有り用材は主として楢・栗等を使用している。その他神楽殿、神門、黒門、社務所等の備有り、神門は文化年中の建立でもと仁王門と称し仁王を安置していたが、妙泉寺の廃寺と共に土渕の仏師田中円吉作の随神像に替えた。昔は古例として年七回の祭儀を執り行ったと伝えられる。今は年一回旧暦六月十八日に例祭を行っているが近くの滝川に神輿を渡御して川の水を濯ぐ行事は京都の祇園御霊会の神輿洗いの行事と同じく上代に於け祓式を存じ他に余り例が無いと云われる。

さて、遠野の盆地からは県道と市道を北へクルマで約40分。ドンつきに早池峰神社はあった。廃校になった小中学校跡を利用した「遠野早池峰ふるさと学校」の駐車場にクルマを駐めた。田舎の分校のようなのどかな空気が漂う校庭だ。

遠野早池峰ふるさと学校

神社の境内はこの学校の西隣にある。神社の正面に向かった。苔むした鳥居が、この地の自然の厳しさを物語る。

早池峰神社(遠野)

鳥居をくぐるとすぐに神門。門の左右、通常、仁王像があるのだが、ここは右大臣と左大臣の随身像があった。明治時代の廃仏棄釈により、変えられたようだ。鳥居同様、風雪による傷みが激しい。だが、目が離せない存在感を感じる立像だった。

早池峰神社(遠野)

神門をくぐると拝殿までまっすぐ山道が伸びている。左右は巨大な杉木立ちだった。

早池峰神社(遠野)

5分ほど凛とした参道を進み、拝殿を抜けると、県指定天然記念物の「夫婦イチイ」があった。雄株と雌株があり、下は雌株。根元周囲が約5メートル、樹高約16メートルある巨木だ。根本には不動明王が祀られ、神域にふさわしい空気が満ちる。

早池峰神社(遠野)

かなりの重量がある鉄製のひしゃくがあり、手水をしようと思ったが、とても片手では持てなかった。

早池峰神社(遠野)

石段に登って本殿へ。鳥居、神門共に、風雪による傷みが気になった。由緒はあれど、過疎地の神社。なかなか修復の寄進を集めるのは厳しいのかもしれない。

早池峰神社(遠野)

なお、早池峰神社の北方には薬師岳という山があって、早池峰山を望むことはできない。せっかくなので、クルマで登山口まで近づいてみた。下が間近に見る薬師岳だ。

薬師岳(遠野)

いつか気候のよい季節、必ず早池峰山の登山に挑戦しようと誓って、早池峰神社を後にした。


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