福島の静かな桜を巡る―須賀川で出会った三本の古木
名所の桜と静かな桜
一昨年は三春の滝桜、昨年は福島市の花見山を訪れた。いずれも見事な桜で、その価値は疑いようがない。ただ、その知名度ゆえに人出も多く、落ち着いて眺めるというよりは、混雑した人の流れの中で「見る」体験になりがちだ。
一方で、三春や須賀川の周辺には、あまり知られていない桜の古木が点在している。案内板も最小限で、駐車場の車のナンバーを見れば、ほとんどが地元のものだ。それらの桜は観光資源ではなく、暮らしの中にある季節の風景として存在している。その場に流れている時間や空気も、名所とはどこか異なる。
冠雪と桜が同時にある風景に惹かれて
もう一つ、福島県の桜の時期には、ほかの地域にはない魅力がある。安達太良山や磐梯山といった山々がまだ白く雪を残している一方で、里では桜が満開を迎える。冬の名残りと春の盛りが同時に存在する、この季節の重なりに惹かれて、ここ三年、桜前線を追いかけるように四月中旬の福島を訪れている。
関東ではすでに桜の季節が終わっている頃に、もう一度、別のかたちで春に出会える。さらに、名所だけでなく、各地に点在する桜の古木を一つひとつ訪ねていくことも、この時期の旅の楽しみになっている。
須賀川で出会った三本の桜
今回は須賀川市の長沼地区を訪れ、三本の桜を見た。護真寺の桜、横田陣屋御殿桜、そして永泉寺の枝垂れ桜である。
護真寺の桜は、小さな境内を覆うように立つ古木で、幹の曲がりや枝ぶりに長い時間の蓄積を感じる。境内へと続く参道の桜並木と、足元に咲くスイセンも可憐で、樹齢450年の古木へのアプローチも印象に残る。古木の前に鎮座する本堂では、今日は明日公開される秘仏を特別開帳して見せていただいた。
横田陣屋の御殿桜は、遠目にもよく目立つ。後ろに立つ古民家と相まって、絵本の世界のような里の風情を感じる。残念ながら、今日は七割がた散ってしまっていたが、すぐ隣に立つ、山から降りてきた巨大な祟り神のようにも見える枝垂れ桜に目を奪われた。
永泉寺の枝垂れ桜は、護真寺や横田陣屋の御殿桜に比べると、四方に円形に等しく枝が広がり、整った姿をしている。打ち上げ花火のような華やかさがあった。
福島県には、こうした古い桜の木が数多く残っている。ソメイヨシノの桜並木とは違って、一本ごとに由来も異なり、それぞれに個性がある。
今年もまた、関東平野で終わった桜の季節を、少しだけ引き延ばすことができた。

















