感想/司馬遼太郎『殉死』

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司馬遼太郎『殉死』殉死 (文春文庫)
著者/司馬遼太郎  発行/文藝春秋

2004年は日露戦争開戦100周年ということで、昨年は司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』にスポットが当たりました。書店で、平積みされている光景をよく目にしました。2007年に、NHKでドラマ化が予定されているそうですが、確かに『坂の上の雲』は、日露戦争をドラマティックかつ壮大なスケールで描いており、エンターテインメントなテレビドラマにぴったりだと思います。

一方、同じ日露戦争を描いた司馬遼太郎の作品の中で、『殉死』は地味な存在。著者自身が、作品の冒頭に「筆者はこの書きものを、小説として書くのではなく小説以前の、いわば自分自身の思考をたしかめてみるといったふうの、そういうつもりで書く。(中略)筆者自身のための覚えがきとして、受けとってもらえればありがたい」と書いています。確かに、先に『坂の上の雲』を読んで、その後、長めの「後書き」として読んでみると味わい深いです。ちなみに、文庫版『殉死』には後書きがありません。

主人公は、乃木希典(のぎ・まれすけ)。旅順203高地を攻めた第三軍司令官。第二次大戦前は「軍神」として崇められ、戦後は『坂の上の雲』によって“無能な”司令官として描かれ、正反対の評価を受けた軍人です。小説では「あまりに愚直で不器用な老人」という像を浮かび上がらせていますが、吉田松陰の継承者たる武骨なスピリッツは共感する人が多いはず。切腹前、裕仁親王(後の昭和天皇)に謁見し、山鹿素行の『中朝事実』を解説するシーンは、胸が熱くなりました。

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