庄内旅行- 松尾芭蕉が憧れた象潟、蚶満寺へ

2023年4月15日

「象潟(きさかた)」という名勝を知ったのは、小学生の頃、両親に買ってもらった日本列島の珍しい地形、風物を紹介した図鑑だった。田んぼの中に、小さな島が浮かぶ珍しい光景に子供心ながら釘付けになったことを覚えている。秋田県にかほ市にあるこの地を、ようやく訪れることができた。

象潟、文化遺産オンラインには下のように説明されている。

秋田県由利郡象潟町  指定年月日:19340122
管理団体名:象潟町(昭9・5・25)
史跡名勝天然記念物

鳥海山は標高2237m。秋田・山形の県境にあり,日本海からそそり立つ成層火山である。今からおよそ2600年前,噴火に伴う山頂付近の崩壊により発生した岩なだれは,当時の日本海に流れ込み,浅い海とそこに浮かぶいくつもの小島(流れ山)をつくった。やがてこの海は,海岸砂丘によって塞がれ,汽水湖(古象潟湖)が形成された。これが古象潟湖である.1689年(元禄2年)当地を訪れた芭蕉が目にしたのはこの景観である。その後1804年象潟付近で地震が起き,象潟付近は2mほど隆起した。このため古象潟湖は干上がり,現在のような流れ山の周辺に水田が拡がる光景が出現した。今でも春,高台から眺めると田には水が引かれ,芭蕉が目にした象潟がよみがえる。

象潟は「九十九島、八十八潟」、また「東の松島、西の象潟」と称され、かつては松島と同じく無数の小島が浮かぶ入り江だった。もし、1689年の地震により地面が隆起しなければ、風光明媚な風景を求めて全国から多くの観光客が訪れたに違いない。

幸か不幸か、地震により入江は消滅。一帯は静かな田園地帯となった。土産物屋も蚶満寺(かんまんじ)にしかなく、訪れた人は心の中で往年の象潟に思いを馳せることになる。

蚶満寺の駐車場にレンタカーを停めて、象潟を散歩した。

蚶満寺は853年(仁寿3年)に天台座主円仁(慈覚大師)の開創と伝えられている。鎌倉時代は執権北条時頼が象潟を訪れて、「四霊の地」と定めて寺領を寄進。肥前島原の西方寺にあった親鸞聖人が腰掛けたとされる石があったり、猿丸太夫姿見の井戸があったりと“いわれ”の見どころがいろいろとある。

ただ、基本的には凛とした空気が漂う曹洞宗の禅寺だ。

松尾芭蕉は『奥の細道』の中で、中国の悲劇の美女・西施を題材に、「ねぶ」を「ねむの花」と「眠る」にかけてこんな句を詠んだ。

象潟や 雨に西施が ねぶの花

蚶満寺の周辺は遊歩道が整備されていた。どうしても写真では立体感が再現できないので、iPhoneのパノラマモードで二点ほど撮影。田んぼに小島が浮かぶ、不思議な光景を分かってもらえるだろうか。

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いくつかの島には上ることができた。下はそのうちの一つ駒留島。てっぺん松林になっていて、地の人のお墓が二つほどあった。

下は、駒留島から付近を見下ろした風景。

黄金色に実った稲穂が風に揺れ、まるで小島が稲の海の中に浮かんでいるようだった。

象潟は想像していたよりも広大で、すべての島々を歩いて回るには一日かかりそう。鉄道でなくレンタカーにして正解だった。

蚶満寺を出発してJR羽越線を越えて海側に出てみた。こちらは海水浴場や漁港があり、日本海ののどかな夏の風情を味わえる。漁港周辺は海釣りポイントになっているらしい。

その後、昼食を取るため道の駅象潟「ねむの丘」へ。こちらは正真正銘の観光スポットだ。海が見えるレストランで、地元、秋田由利牛のハンバーグを食べた。

海側を芝生の広場になっていて日本海が一望できる。なかなか気持ちがいいスペースだ。夕日が見られる場所としても知られているらしい。海を見ながら缶コーヒーを一杯飲んで、象潟を後にした。


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