平林寺(新座市野火止)で紅葉の植栽について考える

紅葉の平林寺

新座市野火止にある臨済宗妙心寺派の古刹・平林寺。紅葉の名所として知られていますが、シーズンに訪れたことはありませんでした。平日なら三密を避けて楽しめるだろうと、有給休暇を取得して出かけてみました。

ところが、境内は一眼レフのカメラを抱えた写真撮影目的の老人でいっぱい。紅葉が美しい撮影スポットはちょっとした密集状態。みんなマスクはしているものの、少しばかり心配でした。三脚・一脚は持ち込み禁止のため、短時間で譲り合って撮影してはいましたが。

平林寺の境内は広大で、大きく分けて3つのエリアに分かれます。入り口に近い南側の山門・仏殿・禅堂等、お寺の伽藍が立ち並ぶエリア、その西側にある幕府の譜代大名・大河内松平家の墓所があるエリア。北側の野火止塚、業平塚、歴代塔所等が点在する雑木林のエリア。

紅葉の平林寺
左/山門 右/大河内松平家の墓所

エリアによって紅葉の色づきのタイミングが異なり、11月中旬から下旬は伽藍エリアと大河内松平家墓所のエリアが、12月上旬から中旬は雑木林のエリアが見頃。

11月30日に訪問したので、伽藍エリアは色あせ始め、雑木林エリアは色づき始めと微妙な頃合いでした。

紅葉の平林寺
雑木林の中にある業平塚

平林寺境内の雑木林は、武蔵野の風情を残す文化財として、1968年に国指定天然記念物に指定されています。雑木林としては国内唯一の天然記念物指定で、広さは約43ヘクタール(13万坪、東京ドーム約9個分)が指定範囲となっています。

ところが、美しい紅葉。1968年の天然記念物指定当時はそれほど大きな存在ではなく、どうやらその後の植栽により増えていったようです。

新座市教育委員会が2015年策定に策定した「国指定天然記念物平林寺境内林保存管理計画」に、以下のような指摘があります。

第3章 近年の変質
「イロハモミジは新座市の木でもあり、美しい。」との理由でモミジの植栽が続けられた結果、今では平林寺が紅葉の名所としての名声が定着した。しかし、モミジが増えれば増えるほど武蔵野の情感は失われる。元々は、伽藍周辺、平林寺大門通り及び陣屋通りの敷地境界に沿って散在していたに過ぎなかったが、平成10年(1998)頃からモミジの植栽が積極的に進められ、モミジ山と称される上野高校敷地跡を中心とした上山一帯、散策路沿いはモミジで埋め尽くされるような状況になっている。このままでは、木の成長に伴い、今後このような傾向がより強まるものと考えられる。

第4章 保存管理計画
モミジの植栽の結果、平林寺はモミジの名所として観光スポットの一つに挙げられることになった。一方で、現状のモミジは、「特定の意図をもってなされた樹木の植栽」であって、天然記念物指定当時の状況からするとモミジの植栽により樹種構成、景観が大きく変化したことは否めない。天然記念物指定理由の趣旨から逸脱することがないよう、モミジを適正に抑制・管理しなければならない状況にある。過植されたモミジは、特に夏季のうっとうしさ、景観阻害などの景観上の問題や、林床植生の貧化、天然記念物指定当時の植生からの乖離などの問題を抱えており、具体的な抑制方法を検討する。


国指定天然記念物平林寺境内林保存管理計画(新座市教育委員会)

上の管理計画の備考欄には以下のような指摘がありました。

原色に近い広大なモノトーンの植栽は近年の流行(各地の芝桜、コスモス、ヒガンバナ等々)で、これらを‘美しい自然’と見る向きもあるが、日本の伝統的な審美感とは相容れないものがある。生物多様性も極めて低い。

確かに近年、日本全国で「花の名所」が整備され、あたかもその風景が「自然である」ように誤解しがち。実は観光という経済性に基づき、自然環境を大きく改変しているのかも。

平林寺の保存管理計画を読み解き、紅葉という私たちの自然観を考えるきっかけになりました。

平林寺の山門
平林寺の山門

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