雑誌の搬入―クラウド時代に触れるメディアの実在
今日は、15年ぶりに復刊した雑誌『月刊ぴあ「とぶ!ぴあ」』のオフィスへの搬入日だった。
久しぶりに、雑誌の搬入を「手」で行った。台車に積まれた、包装紙にくるまれた雑誌の束を、一つひとつ持ち上げ、在庫スペースへと運ぶ。今回、編集部に搬入されたのは約500部。これらは書店に並ぶためのものではなく、社内外の関係者に届けるための見本誌である。ライターや写真家、取材協力先へ送付され、社内にも配賦される。
この編集部への搬入は、流通のためではなく、関係者へ届けるための「内側の搬入」である。制作に関わった人々にとって、自らの仕事がかたちとなって戻ってくる最初の瞬間でもある。雑誌は発売日を迎えて初めて読者の手に渡るが、その前段階として、搬入というプロセスがある。
手に取ると、紙の重みが腕にかかり、束の角が手のひらに食い込む。雑誌は、確かにそこにある。この感覚は、普段デジタルメディアを扱っていると、容易には得られないものだ。かつてWebサービスにも、ラックに収納されたサーバーという物理的な実体があった。
空調の効いた窓のない部屋にラックが並び、サーバーのランプが点滅している。その光景によって、「ここにメディアがある」と実感できた。しかし現在はクラウドサービスの利用が前提となり、そうした実体は意識の外へと退いている。サービスは確かに存在しているが、その所在を具体的に思い描くことは難しい。
その点で、雑誌は徹底してフィジカルである。刷り上がった紙束として現れ、それを人の手で運び、積み、配る。その一連の行為を通じて、メディアは「触れることのできるもの」として立ち上がる。搬入という作業は、単なる物流ではなく、メディアの実在を身体で引き受ける時間だった。
月刊ぴあ『とぶ!ぴあ』4 April-2026(BOOKぴあ)