久しぶりの奥武蔵で感じた、数時間登山の効用
大学に入学する前の数年間、私は奥武蔵の低山をよく歩いていた。日帰りで気軽に登れる山が多く、電車でも車でもアクセスしやすい。杉林の尾根道を歩くのは、仕事の合間のよい気分転換だった。
ところが大学に進学してから状況が変わった。平日は仕事、夜は学修、そして土日はレポートや課題。週末の時間はほぼ学業に費やされるようになり、気がつくと山へ行く機会がほとんどなくなっていた。今回歩いた奥武蔵は、そんな生活の中で約三年ぶりに戻った山である。
奥武蔵という「ちょうどよい山」
奥武蔵の山の魅力は、決して派手ではないことだ。標高はそれほど高くない。険しい岩場が続くわけでもない。それでも尾根道を歩きながら、ときどき視界が開けると関東平野が広がる。杉林の静けさと里山の生活の気配が混ざり合う、独特の雰囲気がある。
今回歩いたのは、日和田山周辺の尾根と座禅岩、そして大峰高峰から五常の滝へ下るコース。いずれも奥武蔵らしい、静かな里山歩きのルートである。派手な絶景があるわけではないが、分岐を確かめながら尾根を辿る楽しさがある。こうした山は、歩くことそのものを楽しむ登山と言えるのかもしれない。
早春の低山の心地よさ
今回あらためて感じたのは、早春の低山の歩きやすさだった。夏の低山は暑さと虫が大変だが、この時期は違う。気温はほどよく、虫もまだ少ない。木々の葉が少ないため、遠くの山並みもよく見える。杉林の尾根道は静かで、歩いていると自然に呼吸が整ってくる。都市近郊の山とはいえ、数時間山の中を歩くと、日常とは少し違う時間の流れを感じることができる。
奥武蔵の山は、こうした穏やかな季節に歩くと、その良さがいっそうよく分かる。
数時間の登山がもたらすもの
三年ぶりに歩いてみて、あらためて感じたのは、数時間の登山が持つ効用である。山歩きは特別な装備や長い休暇を必要とするものではない。奥武蔵のような低山であれば、半日あれば十分に楽しめる。そして数時間尾根道を歩くだけでも、適度な運動になり、体もよく動く。
それだけではない。静かな山道を歩いていると、頭の中が整理されるような感覚がある。日常生活の忙しさの中で積み重なった思考や感情が、少しずつほどけていく。体力の維持という意味でも、気分転換という意味でも、こうした時間は思っている以上に大切なのだと感じた。
大学生活はまだ続く。これまでの二年間は学修中心の生活だったが、三年次からは少し意識的に生活のバランスを整えたい。数時間の山歩きは、そのための良い方法のひとつである。土日のどこかで時間を作り、身近な奥武蔵の山を定期的に歩くべきだ。今回の山行は、そんなことを強く思わせてくれる時間だった。