定年の年に再び書店店頭に立つ―渋谷で見た街と仕事の現在地
原点としての店頭販促
4月6日、雑誌『とぶ!ぴあ』が発売され、久しぶりに書店の店頭に立った。そこで見えたのは、街の変化と、自分の仕事の原点だった。
1991年、新卒で配属されたのは、B5判の情報誌『エルマガジン』編集部であった。それから35年。定年を迎えるこの年度に、再びB5判の情報誌『とぶ!ぴあ』の新装刊に、しかもど真ん中で関わることになるとは、当時は想像もしなかった。
振り返れば、20代の頃、4月の新生活シーズンと10月の学園祭シーズンには、書店や大学生協の店頭に立ち、雑誌を手渡していた。誌面をつくるだけでなく、読者に届ける現場に立つことは、当時の自分にとって仕事の一部であり、同時にビジネスイベントでもあった。
渋谷という街の現在地
発売日は朝から夜まで、久しぶりに終日、書店の店頭に立った。隣に立ってくれたのは入社2年目の若手社員だ。彼らと並んで声を出し、雑誌を手に取ってもらうために工夫を重ねるうちに、不思議と時間の感覚が重なっていくのを感じた。
その一方で、渋谷という街の現在の姿を突きつけられることにもなった。スクランブル交差点に面した店頭に一日立っていると、この街がいかに外国人観光客によって成立しているかが、まざまざと見えてくる。体感では、通行人の7割は外国人旅行者である。彼らの多くは「ぴあ」を知らない。しかし、ゴジラの表紙には強く反応する。ポスターがほしいと声をかけてくる旅行者までいた。
街を行き交う若者たちの姿も印象的だった。個性的なファッションや、アニメの登場人物を思わせるメイクの若者が、自然体で闊歩している。同じ渋谷という街にいながら、日常的にオフィスで接する人々とはまったく異なる世界が広がっている。
現場に立つということ
こうした光景を前にして、自分がいかに「サラリーマン」という限られた世界の中でしか人と接していなかったかを思い知った。同時に、渋谷で働いていながら、自分が見ていたのは“オフィスとしての渋谷”に過ぎなかったことに気づかされた。
現場に立つという行為は、単に商品を売るためのものではない。街の空気を嗅いで、自分の立ち位置を相対化する機会でもある。時代やポジションが変わっても変わらない。むしろ、長く仕事を続けてきたからこそ、その意味がよりはっきりと見えてくる。そんなことを感じた一日だった。