新刊『僕たちの大好きな遊園地』が発売

2023年4月15日

本『僕たちの大好きな遊園地』

久しぶりに出版物に関わりました。新刊のお知らせです。

僕たちの大好きな遊園地(洋泉社MOOK)
定価/1260円 発行/洋泉社

アルバムを開けばいまも思い出す、懐かしいあの遊園地へ、もう一度。向ヶ丘遊園、二子玉川園、東京マリン、宝塚ファミリーランド、甲子園阪神パーク‥‥、昭和の思い出を追う「社会派」遊園地ガイドです。

この本に関わるきっかけになったのは、昨年の秋、版元である洋泉社の編集者が、以前に書いた記事「近鉄あやめ池遊園地の閉園で思うこと」を読んで、メールいただいたことからでした。

東京ディズニーリゾートやユニバーサルスタジオジャパン等、大型テーマパークに押されて閉園が進む遊園地。過去に光を当てた本作りに、協力いただきたい、と。特に、1960~70年代の関西の遊園地事情に強いライターがいないので、お願いしたい、ということでした。

企画書をいただき、「昭和に子供時代をすごしたミドルエイジ」というターゲット層に沿った、遊園地のラインナップと解説ポイントをまとめて、一ヶ月後、二本ほどサンプル原稿を書いて送ったところ、西日本のページをすべて執筆してほしい、という依頼がありました。

「正月休みにまとめて書くけど、4000~5000字程度必要な遊園地もあり、すべてを書くのは厳しい」とお返事をして、大阪の編集者時代、競合媒体だった「ぴあ関西版」元編集長を紹介。宝塚ファミリーランド、近鉄あやめ池遊園地等、すでに閉園した遊園地のみ、私が執筆する運びとなりました。

なので、今年の年末年始は、田舎のネットカフェに入り浸って、ノートパソコンで原稿執筆にいそしみました。しかし、4000字クラスの原稿なんて本当に久しぶり。「書く」基礎体力がすっかり落ちてしまった事実に愕然としました。結局、年末年始では書き終えることができず、成人の日の三連休もつぶしてようやく仕上げた次第です。

今回、私が執筆したのは下の10遊園地。

  • 宝塚ファミリーランド
  • 近鉄あやめ池遊園地
  • 甲子園阪神パーク
  • 奈良ドリームランド
  • 近鉄玉手山遊園地
  • さやま遊園
  • 比叡山頂遊園地
  • 八瀬遊園
  • びわ湖タワー
  • 伏見桃山城キャッスルランド

この本は、遊園地の施設紹介よりも、遊園地を通して見える「昭和」の世相や、家族のライフスタイルにフォーカスしています。

例えば、甲子園阪神パークのページ。阪神パークは、ヒョウとライオンの混血児「レオポン」の飼育で知られていましたが、当時、トラとライオンの混血児「タイゴン」や「ライガー」等、世界中の動物園が、異種交配の新しい猛獣を生み出す競争をしていたこと。

玉手山遊園地のページでは、家族の休日のレジャースタイルが、子ども会(=地域単位)からマイカーでお出かけ(=家族単位)に変容し、子ども会のハイキングでにおいて、柏原名産のブドウ狩の「お弁当を広げる場所」としての役割が、1980年代には必要なくなったこと等です。

そのほか、あやめ池遊園地では、第二次大戦中、時局に対応した大型の軍事宣伝イベントが開催され、実物の爆撃機や巨大な戦場ジオラマが園内に創出されたこと。敗戦後、わずか数年の後に、同じ場所でGHQ主導のアメリカ文化を啓蒙する大イベントが開催されたこと。激動の時代に翻弄された遊園地の姿を、当時の写真とともに解説しています。

読み物は40代の研究者が執筆。

中でも、原武史明治学院大教授による「遊園地という思想~堤康次郎と正力松太郎」が面白いです。読売グループと西武グループ、二人の総帥が、最晩年、よみうりランドと西武園、大型遊園地プロジェクトで何を考え、何を目指したのか? 非常に興味深いコラムとなってます。
一見、一昔前の遊園地ガイド風の装丁ですが、最盛期の「別冊宝島」を彷彿させる“濃い”内容です。ぜひ、本屋でお買い求めくださいませ。


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仕事遊園地

Posted by Asanao