感想/吉村萬壱の芥川賞小説『ハリガネムシ』

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数年前に、電子書籍リーダーを購入後、芥川賞受賞作をずいぶんと読んだ。芥川賞受賞作には、いくつか性格のカテゴリーがあるように思う。「ヒトの暴力性と獣性」を描いた作品群はは一つの傾向だろうか。

吉村萬壱の『ハリガネムシ』は「ヒトの暴力性と獣性」 の流れにある。花村萬月『ゲルマニウムの夜』の暴力性に、町田康『きれぎれ』の疾走感を加えたようなものだろうか。新鮮な驚きはなく、既読感があった。

Amazonよりストーリー紹介。

物語の主人公は、高校で倫理を教える25歳の平凡な教師中岡慎一。アパートで独り暮らしをする慎一の前に、半年前に知り合った23歳のソープ嬢サチコが現れる。サチコは慎一のアパートに入り浸り、昼間は遊び歩き、夜は情交と酒盛りの日々を送る。サチコの夫は刑務所に服役中で、ふたりの子どもは施設に預けたままだが、詳しい事情は明らかでない。慎一はサチコを伴い車で四国に旅立つが、幼稚な言葉を使い、見境なくはしゃぎまわり体を売るサチコへの欲情と嫌悪が入り交じった複雑な感情は、慎一の中で次第に暴力・殺人願望へと変容していく。慎一は、自身の中に潜在する破壊への思いを、カマキリに寄生するハリガネムシの姿に重ね合わせる。

倫理の高校教師である主人公と風俗嬢のサチコ、二人の堕落した暮らしを描く。中間部、サチコの故郷である四国へ二人で車で出かける箇所は、ロードムービーのようで面白かったが、最終局面で、これでもかという暴力的な描写が続き、気分が悪くなった。早く読み終えてしまいたい、この場を立ち去りたい衝動が抑えられなかった。引き返すことができない、お化け屋敷の通路を歩いているような感じだろうか。

芥川賞の選考委員の中では、宮本輝氏のコメントに共感(「芥川賞のすべて・のようなもの」より)。

「受賞に私は反対した。」「また古臭いものをひきずり出してきたなという印象でしかなく、読んでいて汚ならしくて、不快感に包まれた。」「『文学』のテーマとしての『暴力性』とかそれに付随するセックスや獣性などといったものに、私はもう飽き飽きとしている。」
芥川賞のすべて・のようなもの」より

読後、残るものはなかった。ただ、 グロテスクな描写に辟易しながらも、途中で本を閉じることなく、読者の襟をつかんで最後まで引っ張っていく不思議な力を持っている。

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