岩手旅行- 雨の遠野、夏なのに沈鬱な町へ

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遠野市街地
遠野。遠野物語の存在を知ったのは、中学生の頃だったろうか。テレビのオカルト番組で、遠野という地名と柳田國男『遠野物語』を知った。それから学校の図書館で文庫本の『遠野物語』を借りて読んだものの、旧仮名遣いでとにかく読みにくかった。ただ、土着的な空気に、ほのかな憧れのようなものを感じた。

それから30年もの時間が経過し、ようやく遠野を訪問することができた。

JR釜石線
14時半すぎ、花巻駅発のJR釜石線に乗る。釜石線はローカル線だが、「銀河ドリームライン釜石線」という愛称で、各駅にはエスペラント語の駅名が付いている。例えば、花巻駅は「チェールアルコ(虹)」、宮守駅は「ガラクシーア・カーヨ(銀河のプラットホーム)」、遠野駅は「フォルクローロ(民話)」といった感じ。ただ、列車や駅舎はローカル線の風情が漂う、ひなびた感じなのに、駅名標だけがファンタジーなデザイン。取ってつけたようで違和感があった。

1時間ちょっとで遠野駅に到着。8月の終わりとはいえ、肌寒い。観光地なので駅前の広場は整備されているが、タクシーが2台ほど停まっているだけ、遠野駅で下車した観光客は、私も含めて数人だった。

JR遠野駅
前日に予約した旅館「福山荘」を目指す。小雨で薄暗い上に商店は閉まっているので、街は陰鬱な印象。まぁ、快活を求めて遠野にやってきたわけではないので、この空気を楽しもうと思った。

10分ほど歩いて「福山荘」に到着、帳場で「すみません」と声をかけたが、何度呼んでもスタッフは出てこない。仕方なく、ロビーのイスに座って待つ。向かいのイスには白猫がのんびりと寝ていた。ここの看板猫だろうか。

遠野・旅館「福山荘」
静か。大きな柱時計の音だけがロビーに響いている。30分近く待って、ようやく宿の女将さん(?)が帰ってきた。ネコ顔だ。昼寝していたのだろうか、何となく眠そう。この緩い空気も、遠野の旅館なのでよしとしよう。

遠野・旅館「福山荘」
部屋は、裏の駐車場に面した6畳の和室。一泊素泊まり4,500円(夕食付き7,500円)なのでぜいたくはいえない。荷物を置いて、町を歩いてみようとしたが、ますます寒くなっているので登山用のヤッケを着た。夏の街なかで役に立つとは思わなかった。

柳田國男が宿泊した高善旅館跡、真宗大谷派の萬福寺等を見て歩いた。『遠野物語』を読んだだけに高善旅館跡は、気になる場所ではあったが、跡地を示す新しい石碑があるだけで、趣はなかった。

高善旅館跡
それよりも面白かったのは、人気にない大通りにある「遠野ショッピングセンターとぴあ」だった。市役所と小さなショッピングセンター、スーパーマーケットが一つの建物の中に入っているのだが、イオンの大型ショッピングモールにはない「イケてなさ」が、かえって興味がそそった。喫茶店(カフェにあらず)でコーヒーを飲んだり、小さな本屋で雑誌を立ち読みしたり、ダラダラとした時間を過ごした。

8月だというのに、17時をすぎるとなんだか暗い。雨だからか、盆地だからか。18時前には旅館に帰った。

旅館に泊まっても、私の場合、たいてい素泊まりが多いが、この日は珍しく夕食付きで予約をした。大広間で食べる夕食は、ジンギスカンとお刺身と焼き魚、1泊7500円にしては豪勢だった。宿泊客は私の他に男性が数人。いずれも旅行者というより、長期宿泊のビジネスマンに見えた。ここ数年、地方を旅して知ったことだが、公共事業関連は地方の田舎に長期出張する業務が多いようだ。この町に、仕事で長期滞在するのって、どんな気分なのだろう。いざ仕事となれば、割り切れるものかもしれないが。

遠野・旅館「福山荘」
部屋の茶菓子がおいしかったので、街なかに買いに出かけた。まつだ松林堂という店の「元祖 明がらす」というお菓子だ。ゴマとクルミのほのかな風味がある素朴な和菓子。

お店のサイトを見ると、こんな由来が描かれてある。

 二代目桂次郎の時代、南部駒の市場として盛岡と並び称された遠野に時の馬政局次長藤波子爵が馬産視察に訪れる機会がありました。
 その際、初代から「くるみ糖」という名で作っていたお菓子を桂次郎が新たに「明がらす」と名付け子爵に献上したのが「明がらす」の起源です。その後商標登録を行い、現在は4代目である勝夫がその伝統の味と技を守り続けております。
 昭和天皇・今上天皇がご来県の折のお茶菓子として献上したほか、表千家の茶事へのご用命、JAL国内線ファーストクラスのデザートに採用されるなど、広くご愛顧頂いております。

6個入りを買って、遠野滞在中、お茶とお菓子のささやかな時間を楽しんだ。

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