庄内旅行- 鶴岡の即身仏を巡礼-本明寺と大日坊

2023年4月15日

一週間の庄内旅行も実質、この日が最終日。明日朝の普通列車で首都圏に帰る。最終日は、鶴岡周辺の即身仏の巡礼で締めくくることにした。

鶴岡市内には、本明寺、大日坊瀧水寺、注連寺、南岳寺、4つのお寺に、4体の即身仏が祀られている。酒田市内の海向寺には2体の即身仏が祀られており、日本全国で十数体ある即身仏のうち、6体が庄内平野におられる。

山岳信仰の極み 即身仏を訪ねる旅(やまがた庄内観光サイト)

即身仏=ミイラと考えられがちだが、少し違っている。ミイラは、死んだ人の遺体から内蔵を取り出し、防腐処理を行ったもので「他者の手」によるもの。

一方、即身仏は、厳しい修行によって体から脂肪や水分を落とし(防腐のため、自ら漆液を飲むらしい)、最後は生きながら土の中に入って断食死(「入定」という)。数年後に掘り出されたものだ。

小学生の頃、子供向けの図鑑で庄内地方の即身仏の存在を知り、何となく気になっていた。レンタカーを12時間借りて、鶴岡市内の4つのお寺を巡礼することにした。

直前のアポでも快く参拝させていただいた「本明寺」

まず最初に向かったのが本妙寺。ここは他の3つのお寺と違って即身仏が常に公開されているわけでなく、連絡のうえ参拝をお願いしなければならない。朝9時にお寺に電話したところ、当日の参拝を快く参拝を受け付けてくださった。「しかも、今から行きます」という直前のアポ。遠方から来た旅行者とはいえ、ちょっと心苦しかった。

鶴岡・本明寺

鶴岡市内からはクルマで30分程度、カーナビがあるのでスムーズに到着できた。周囲は稲穂が実る田園地帯。小さな駐車場にクルマを停めて、石の階段を上る。本堂の入り口でベルを鳴らすと、ご住職の奥さんが出てこられた。

「ちょうど今、住職は外出してましてね」と、気さくに自ら即身仏が安置されたお堂に案内いただいた。下が即身仏堂。

鶴岡・本明寺即身仏堂

日の光が当たる境内から薄暗いお堂の中に入る。正面に本明寺上人の即身仏が安置されている。「すぐに目が慣れて、見えるようになりますから」と奥さん。

確かにしばらくすると、白いお顔がぼんやりと見えてきた。まるで90歳くらいのおじいさんが縁側でぼんやりしているよう。生きていらっしゃるようだ。

本明寺上人の即身仏は、庄内地方6体の即身仏の中で最も古く、1682年、江戸時代初期に入定。損傷が少ない姿で残されているのは、徹底した木食行によるものとのこと。

12年に一度、即身仏は衣替えされる。その時のお話や息子さんの修行のお話等、20分ほどお堂で奥さんが親しく語ってくださった。お賽銭にお金を入れて手を合わせたものの、念のため拝観料について尋ねると、「お賽銭していただいたので結構です」とのこと。

その後、即身仏堂を出て数十メートル離れたところにある、上人の入定した場所に立つ「入定塚」に案内してもらった。

鶴岡・本明寺入定塚

杉木立を拔けると立派な石碑が経っていた。奥さんは「ゆっくりして行ってください」とおっしゃったので、ここで分かれて20分ほど杉木立の空気を吸って過ごし、入定塚を後にした。

廃仏毀釈の災難に遭った「大日坊瀧水寺」

次に訪れたのが、鶴岡市大網にある「大日坊瀧水寺」。この寺は、弘法大師・空海により開かれ、かつては湯殿山の本寺として栄えた由緒ある寺だ。

鶴岡・大日坊瀧水寺

1279年、鎌倉時代に創建された仁王門の前にクルマを停めて境内へ。

古い仁王門と、江戸時代に建立された宝筐印塔(右下)に比較して、本堂は新しい時代に建った建築の印象を受けた。その理由は後に、住職から詳しく聞くことになる。

大日坊瀧水寺

本堂の入口で拝観料500円を納めて堂内へ。見学の前に、まず仏前でお祓いを受けることになる。密教系のなかなか“豪快な”お祓いだった。

大日坊瀧水寺・本堂

幸い、この時間、参拝客は私一人だったので、住職直々に本堂内にあるさまざまな宝物の説明を聞かせていただいた。

そして、真如海上人の即身仏へ。下がそのお姿(大日坊のパンフレットより)。

大日坊・真如海上人即身仏

ここの住職も気さくな方で、即身仏を拝みながら、一時間弱、出羽三山と大日坊の関係、明治時代の苦難についてお話してくれた。

先に書いたように、このお寺はかつては湯殿山の本寺として、広大な敷地を持っていたという。しかし、明治政府の神仏分離令により湯殿山は神社となった。大日坊も神社になるように新政府より圧力を受けたが、弘法大師ゆかりの寺の誇りにかけて拒否。結果、焼き討ちにあい、三体あった即身仏のうち、二体が消失。別棟に安置されていた真如海上人の即身仏だけが残ったという。

鶴岡・大日坊瀧水寺

かつて日本にも、現在の中東のような宗教と政治を巡る激しい抗争があったのだ。仁王門へと続く帰り道、焼き討ちにあった燃え盛る寺院をイメージしようとしたが、稲穂が実る大日坊周囲の風景を見るに遠い遠い世界のようだった。


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