感想/笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』

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笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』タイムスリップ・コンビナート
著者/笙野頼子
発行/文藝春秋

電子書籍リーダーを買ってから、過去の芥川賞作品をずいぶんたくさん読んだ。この小説は第111回、1994年(平成6年)上半期の受賞作。

読み始めて、「これ、冗談? なんじゃらほい?」というあまりに突拍子もなく、めくるめく展開に面食らった。「マグロと恋愛する夢を見て悩んでいたある日、判らん奴から電話がかかってきて、JR鶴見線の終着駅・海芝浦に出かける」という一人称の物語だ。

ただ、幻想と現実が交じり合う訳の分からなさに戸惑いつつも読み進められたのは、私自身が昨年春、JR鶴見線が気になって、ただその線に乗るためだけに出掛けたことがあったから(写真下)。工業地帯を走る鉄道線は、理由なく惹かれるものがあった。

京浜工業地帯を走る鉄道小旅行へ(2013/4/14)

JR鶴見線浜川崎駅
この小説、読み終えて、どこか音楽的なメロディー、リズムを感じた。作者の文章は、論理ではなく感覚に訴える何かがあるのだろう。

書名になっている『タイムスリップ・コンビナート』よりも、同じ本に収められている短編『シビレル夢ノ水』の方が面白かった。ネコを拾った主人公が、ネコが飼い主に引き取られた後、部屋に居ついた蚤と暮らし、巨大化した蚤に血を吸われながら、ギリギリの「生」を感じるという物語。

タイトル通り“シビレル”小説だった。